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2016年2月23日 (火曜日)

空想世界で舘ひろしに会う

伊丹へ行く飛行機に乗っている。
8のBだ。A にはサラリーマン風のおじさんが一本指でメールを打ち、それが終わると鼾をかいて寝た。Cには舘ひろし風のサラリーマンがマスクをして新聞を読んでいる。お茶も断り、新聞を読み終えるとひたすら前を向き隙を見せない。
さて、この男性に話しかけるには、どうしたらいいだろう。こんなことを考えたのは、いま、岸政彦氏《社会学者》の本を読んでいるからだ。彼は意味のないようなことの中に意味を見いだそうとしている。一見無意味に見える出来事が人生を構成している。その瞬間は忘れられない思い出として私を構成する。
その紳士、館は、靴を見た。靴はピカピカに輝いている。右足を動かし、左足を動かし靴の輝きを確かめ、これでよしとつぶやいた。ような気がした。
館さんは、多分僕と同年代だろう。僕は他人の年齢をだいたい当てることができる、経験上。僕の方は、どう見てもサラリーマンには見えないし、紳士にも見えない。自由業のおじさん風である。だとすると声をかけた場合、無視される可能性が高い。
それに、鞄にはからしレンコンの黄色いマスコット人形が揺れている。からしレンコンの人形をぶら下げている大人は信用できない。
どう攻めるか。先ほどから飛行機は着陸態勢に入り揺れている。それ時乗じて、右ひじを少しぶつけ、「すみません」という。紳士は少し頷くが表情を変えない。それから少し時間を置きマスクをしている紳士、舘さんに、「風邪ですか?空気が乾燥してますからね?」と話しかけてみると。館さんは、聞いていなかったような様子で、反応がない。これで全ての会話が終わる。
ここから物語がはじまる。架空のね。
館さんが、その後事件を起こし、刑事が僕に質問をする。
どんな人でしたか?
すると僕が答える。「全く覚えてません」と。本当にどんな人か覚えていない。しかし、その記憶は忘れられない。
そう、忘れられないけど、覚えていないことってある。そうした、物語が幾重にも重なり人生ができている。さっきもタクシーに乗った時女性の運転手と楽しい会話をした事を覚えているけど、彼女の顔は思い出せない。
それにしても館さんは渋い顔をしていた。その渋さだけは味として思い出せる。

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