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2013年4月28日 (日曜日)

ブンミおじさんの森

パルムドールをとったタイの映画。

死期が迫ったブンミさんに起こる不思議な物語。

ブンミさんは透析を受けている。自分の死期が近いことを察し、身近な親族を呼び集める。この国では、どのように死ぬかということも大事だが、誰と一緒に死を迎えるかを大切にするのだろう。

そこに、十数年前に死んだ妻が現れる。行方不明だった息子が現れる。森の中では猿の精霊が飛び回っている。そう、死後の世界と現世とが混濁している。

この映画が面白いのは、死んだはずの妻は、霊ではなく、生きているかのようにふるまうことである。

ブンミは、妻を抱き寄せる。冷たい妻ではあるが(死んでいるので)そのシーンはとても温かさを感じる。そして、妻に聞く「死ぬことはどんな感じだろう」と。

タイの東北地方だろうか、森から絶えず音が聞こえてくる。夜になるとその音は波のように大きく小さく、時に僕を包み込むように。こんな経験をしたことがある。

つげ義春の「夜が包む」という話がある。夜がどんどん部屋の中に入ってきて、つげを襲い始めるというような話だった。夜に襲いかけられたら逃げることもできない。

そんな暗いだけでない、精霊たちがうごめいている夜の森から音が聞こえてくる。

精霊は、隠れているわけではない。いつもブンミのそばに住んでいる。ブンミは、前世では猿だったのかも、大きな木だったのかもしれない。そうした、自分とつながる世界の中で生きている。

猿の精霊は、赤い目を二つ持ち、黙ってこっちを見ている。見られているのはブンミではなく、映画を見ている観客である。それは、家に帰ってからも現実とつながり、ベランダの窓を開け裏の森を見入ると、赤い目に見られているような気がする。

きっと、見ているのだろう。そして、待っているのだろう。

ぼくが、そちらの世界にくるのを。

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