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2011年6月 6日 (月曜日)

そんなことはあまりない

「援助するということ」を、その受ける側から捉えると、援助の世界は全く違うものに見えてくる。

今までの援助論は、どのように援助するか?どうしたら効率のよい援助ができるか?効果的な援助技術とはどのようなものか?など、援助をする側の話が中心となっていた。

しかし、そうした援助は必ずしも受ける側にとって望ましい援助とは言えない。

もっとの、それを受ける側は援助をされることを望んでいるのか?という問いも必要であるが、ここではそれは置いておく。

援助するとは、援助者からの発想であり、援助される側にニーズがあり、それを満たすことだと信じられている。

それは、援助の非対称性を問題にし、相互作用はあるにしても、援助者と被援助者の関係は援助をする、される前から固定されており、けっしてその役割が変わることが無いと思われていた。

そこには、援助役割の逆転は起きにくい構造があり。援助者は間違っても援助されてはいけないと教え込まれている。

そうした構造に疑問を投げかけているのが鷲田だ。

鷲田は言う。

援助をしているのか、援助されているのかわからないような関係になる時、双方に新しい関係が生まれると(これは僕が言っていることです)。

鷲田のたとえ話。

病院のベッドに老人が寝ている。彼は、病気というより不活発病、つまり、極度の意欲低下がみられる状態である。

病院の看護師は、看病をし、世話をし、介護を行っている。つまり援助をしている訳である。

その援助は、マニュアルにより行われ、援助者が変わっても一定の質と内容が確保され、安定したサービスが実施されている。

しかし、彼の意欲は低下した状態であり、身体は全く動かず、目は開かない。

そこに、一人のだめな看護師が現れる。

彼女は、疲れている。疲れを取るためには長時間の勤務の中で5分の休息が必要だ。あまりに疲れると、彼のベッドにやってきて、”サッ”とカーテンをしめ、おおいかぶさるように身体を預けて寝てしまう。

彼が意識がないことをいいことに休憩を取っている。

その時、彼に変化が起きる。

彼女のぬくもりを感じながら、いつの間にか開かないと思われていた目を開けて、廊下を見はるようになる。それは、彼女が見つからないようにするための監視(援助)である。

さらに、廊下に異変(婦長の影)を感じると、彼女の身体を押すように(動かないと思われていた)指を動かして教えるようになった。

それを見ていた鷲田は、なにかいいものを見たようにうれしくなってしまう。

援助が、クライエントとその環境に働きかけ、クライエントをエンパワメントするとしたら、彼女の行動は援助であり、同時に、彼も援助行動を行っている。

こうした援助の逆転は、意図した行動では起きない。また、しっかりしたマニュアルの中では生まれない。

それは、「めいわくをかける」関係の中で生まれる。

援助者にとっていちばんしてはいけない行為がクライエントに「迷惑をかける」ことだ。

今回被災地で、ボランティアに行っても決して地元に「迷惑をかけないように」と言われ、コチコチンになってしまった人が多かった。

迷惑をかけないと心に誓った時、人は身動きがとれなくなる。

生きている以上、何かをする。何かをすれば、もしかしたら迷惑になるかもしれない。こんなことを言っては失礼だろうか、こんなことを聞いては相手を傷つけるだろうか?そんな事ばかり考えていては、何にもできない。

生きるということは迷惑をかけることだと開き直ったとき、相手と対等になる。

鷲田が紹介している遠藤さんは、「人に迷惑をかけること、それは必要なことである」といっている。

遠藤さんは、24時間介護を受けなければ生きることができない。

人に、迷惑をかけることで、初めて生きることができる。

そうした状況の中で、自分が迷惑をかける行為により、相手の援助を産むことができると考えたのかもしれない。

さらに、「めいわくかけてありがとう」と言い残して死んでいった、たこ八郎の物語。

(たこの物語は以前書いたのでそれを見てください)

援助関係という非対称性を持つ関係が、対象的になることは殆どない、殆どないからこそ、それが生まれるような関係が起きた時、私たちは感動する。

弱いものが強いものから援助されるだけなら物語にはならない。

強いものが、弱いものにより生かされるとき、物語ができる。

*この話を新幹線で作っていた時、前の席に鷲田先生(又は、世界で3人いるというそっくりさん)が座っていたのでびっくりした。

参考;「’弱さのちから’ーホスピタブルな光景」 鷲田清一 講談社

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