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2011年5月 2日 (月曜日)

雨の日に

たぶん夫婦だろう。

妻はコーヒーショップで一人で何かを待っている。

そこに、夫らしい男性が後ろからそっと現れ、妻の背中を小さくたたく。

妻は、それに気づいているのに、知らないふりをして黙ってコーヒーを飲んでいる。

妻の左の耳が、「わかっているわよ」と言っている。

その耳に押されるように、夫は黙って隣に座る。

二人は並んで座っている。

目を合わせることはない。

夫は妻を見ない、妻は夫を見ようとしない。

二人は目の前に置かれている死んだ植物と話をしている。

死んでしまった植物は憐れむような目つきで二人を見ている。

妻は大きな袋を持って立ち上がる。

夫は、妻のコーヒーを片づけ、テーブルの汚れを紙ナプキンで拭きとる。

外は雨が降っている。

妻は傘をさして夫を待っている。

夫は、静かに傘に入込み、二人は歩き始める。

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