おいしい
右手に漆のフォーク、左手に匙を持ち、はじめは寒天をつついていた。
しかし、まどろっこしくなったのか、匙ですくいはじめた。
鶴さん(仮名)とおしるこ屋に入ってクリームあんみつを注文した。
鶴さんは、さっきから嬉しそうに喋りっぱなしである。
「こんな美味しいものは生まれて初めて食べた」と何度も繰り返す。
そして、「あんたも食べなさい」というが、アイスクリームとあずきを混ぜるのに集中しているので、顔は下を向いたままだ。
こんなに幸せな人はいないんじゃないかという顔をして食べることに集中し、それでも喋ることをやめない。
しまいには、器を持ち上げ、最後の一滴まですくいあげた。
鶴さんが美味しそうに食べるのを見ていた。
ずっと、一言も喋らず見ていた。
見ていて全く飽きなかった。
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