子どもは自由なんて嘘だ
「少年曲馬団」をまだ読んでいる。
面白くて、早く読み終わってしまうのがもったいない。
惟朔(いさく)は、学校に行かない、先生の言うことを聞かずに廊下に立たされている。お父さんは会社に行かず家にいて威張っている。お父さんは、惟朔に岩波文庫を読めと命令する。旧仮名使いの鴎外を読ませて自分は遊んでいる。
今日も学校をサボって、コロッケを頬張り、宝を探しに出かけてしまった。
D51が通る線路に花火なんか置いて。
その頃僕は、小田急線の踏み切り脇に立ち、ロマンスカーを見ていた。ただただ、眺めていた。すぐそばを走るロマンスカーが風を起こすので、少し足を踏ん張っていた。
惟朔と僕は一つ違いである。それなのに、全く住む世界が違い、勇気が違う。
だから、惟朔の物語を読んでいると、少年時代を想いだして、先に進めない。
急にへびが養鶏場の卵を飲み込んだ姿を思い出す。小川を竹の棒で越える冒険を想いだす。肥溜めに落ちた仲間の泣き顔を想いだし、東映撮影所でゴジラの特撮を撮っていたその模型のリアルさを想いだしてしまう。
惟朔は、後ろを振り返らない。
後ろを振り返る小学生もいないだろうが。それでも、大人以上に大きな悩みを抱えている。子どもが自由なんて嘘だろう。
何をしていいか分からないから、とりあえず前に進んでいる。そんな惟朔のけな気な姿がいい。
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