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2008年5月11日 (日曜日)

母の日

吉男(仮名13歳)は、母の日が嫌いだ。

吉男にも母と言われる人はいる。

「オレだって、オッカアはいる」と、いう。

しかし、そのオッカアから捨てられた吉男は、母親を憎んでいる。

その憎い母親のことを想いだす母の日は、1年で一番、来て欲しくない日だ。

友達の晃に、「買い物に付き合って欲しい」と云われた吉男は、仕方なくついて行った。そいつとは、2年の付き合いで、兄弟以上だと思っているから、断れなかった。

それに、どこに行くのか、知っていた。

晃は、母親に買うカーネーションを、一人で買いに行くのが恥ずかしいから吉男を誘った。

誘ってくれるのは、嬉しかったが、嬉しそうに花を買う奴が沢山いる花屋には行きたくなかった。

晃は、買う花がなかなか決まらない。吉男は暇なので、ぼーと花を見ていたら、店員の若いお姉さんが声を掛けてきた。

「この花きれいでしょ」

「はあ」

「君もお母さんにプレゼントしないの?」

「・・・」

その時、吉男は想いだした。

幼稚園に行っていたとき、紙で作ったカーネーションをオッカアにあげたら嬉しそうに笑ったことを。

そういえば、笑い顔を見たのは、あれだけのような気がする。それ以外に覚えている顔は、泣いているか、怒っているかのどっちか。

「その真っ赤なやつください」

吉男は、一本だけカーネーションを買い、包んでもらった。

家に帰るまで、笑っていた。

晃が聞いた「なんで笑っているんだ?」と。

吉男は言った。

「これも、お前の母ちゃんにやるよ」

吉男は、握りしめたカーネーションを晃に渡した。

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