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2008年3月17日 (月曜日)

メタボラ

絶望的な小説だった。

しかし、読み続けたいという欲求が湧いてくる。

ギンジ(アキンツにつけられた名前)とジェイクの物語。

ジェイクは沖縄の原生林でお化けに出会う。それがギンジとなり、二人は破滅に向かう。

ギンジと呼ばれる青年は家庭からのサバイバー(生き残り)である。崩壊した家庭や親を憎み、それでいて憎む父親に似ている自分を捨てようする。

家庭が崩壊し、全てを失うなか、他人との距離をうまく取れない。俺は正しいのに皆が悪いと感じるのだが、次第に、自分の中に異質などろどろしたものを感じ始める。それは、一番嫌いな父親が持っていたであろう「家族」に対する感覚となる。

家族を失い、帰る家を奪われ、自分をうまくつかめないギンジ。死ぬこともできず、記憶を失う。全てを失ったとき出合ったのがジェイクである。ジェイクの中に、希望を見つけ生きていこうとする。

ジェイクもまた、家庭や家族をうまくつかめない青年。何から逃げているのか分からないがとにかく島を出る。

ジェイクとギンジが一番違うところは、ジェイクには帰る家があるということ。ジェイクはどんなに失っても、島がある。ジェイクは、島を捨てたが、ギンジは家庭から捨てられた。

舞台は沖縄。

きれいな海と失業と基地の街。

そこは日本であり外国でもある場所。

人々は自分の土地(島)の言葉を持ち、決してそれを離さない。それが力となっているように感じる。

ギンジは自分の言葉を持たない(持てない)。彼の言葉は借り物であり、憎むべき父親のもの。彼は記憶を無くす必要があった。全てを無くして自らの言語を得ようとしているんだろう。

生き生きした言葉を話す男がギンジであり、彼の中に新しい自分を見つけようとする。

もう一度生きることを願う。

どうしてこの小説に惹かれるのか。

自分の中にいるギンジやジェイクのその後を知りたいからだ。

桐野夏生作 朝日新聞社

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