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2008年3月 8日 (土曜日)

くりそつ

「さいとうさん」と呼ばれた。

「はい」と答えたが、その女性を僕は知らない。

たぶん知らない。

しかし、彼女(結構、人生経験を重ねているがそう呼ぶ)は、自信を持って僕の顔をジーと見ている。

余りに自信を持って見られるので、「いい天気ですね」とごまかそうと思っても、部屋の中で天気が分からない。

何処かで会った気もしないし、誰にも似ていない。困ってしまった。
そんなこちらの異変を察知して、彼女は、

「いやー、違うかしら?」と、いう。

「はい」と曖昧に答える僕。

そして、僕の名札を見つけて、「さいとう」という名前を確認する。

その後、首を何度も傾げながら、黙ってその場を去ってしまった。

それから。

再びそこ(施設)を訪問した。

再び、彼女と廊下で会う。
きっと、僕が来るのを待ち伏せしているに違いない。

「先日は失礼しました。でも、よく似てるわね」とだけ言って、また、首をかしげながら去っていった。

みたび、そこを訪問する。

またまた、彼女に遭遇。


突然、「ちょっと来て」と、別室に連行される。

どこに連れて行かれるのか恐怖に震えていると、デイサービスセンターに連れて行かれた。

すると、その場にいたお客さんがいっせいに僕を見る。

「似てるわ」

「そっくりだ」

と、懐かしそうな顔で見る。

どうやら、退職した職員に僕がそっくりで、名前も同じ「さいとう」で、さいとうさんが再び施設に帰ってきたということになっていたらしい。

施設から帰るとき、施設用に挨拶した。

「確かに似てます」と、施設長にまで言われた。

世の中には、そっくりな人が3人いるというが、なにも僕に似ていなくてもいいのにと思う。

しかし、是非ともその人に会いたいと思うが、会うのはいつもおしゃべりな彼女だけ。

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