そこにあたしの人生が書いてあるのよ
Sさんの資料が袋一杯届いた。
Sさんは認知症。
昔のことを聞いても同じ話を何度も楽しそうにするが、一向に先には進まない。
「お仕事していたんですか」と大きな声で聞く。
「そんなには食べられません」と返事。
「保険に入っていましたか」
「そこの箪笥を片付けてください」と、そんな調子。
とにかく、こちらの予想に反する答えを絶妙なタイミングでする。まるで、プロの漫才師のようだ。
本人に質問をすることを諦め、家に帰ってから書類を読む。
大事にしていた書類と、破られた書類。それらを一つひとつ読みながらSさんの昔を想像する。破られている物に特別の意味が含まれていることもある。何しろ、破ってあるのに残っている。
そうした作業もくり返すうちにコツがつかめる。
90歳のおばあさんも、生まれていきなり90歳になった訳ではなく、毎年1歳づつ年を取ってきた。恋もしただろうし、苦労もしただろう。
そんな人生が見えてくるとSさんの顔が、ちがって見えてくるから不思議だ。
「苦労したんだね」
「そんなことないよ」
今度はまともな答えが返ってきた。
| 固定リンク
« 演じる私 | トップページ | ハードボイルドな夜 »
「成年後見」カテゴリの記事
- 値切る(2009.06.03)
- 思うようにならない自分(2009.05.27)
- おいしい(2009.05.12)
- クライエントとの距離(2009.05.11)
- 初対面(2009.04.27)


コメント